長浜市余呉町は同県の最北端に位置し、周囲のほとんどが山岳地帯となっている近畿地方屈指の豪雪地帯です。余呉町では、昭和40年代まで、山の斜面を利用した焼畑農業が盛んに行われていました。

伐採した木材は炭焼に使い、山かぶや雑穀などが栽培され、豊かな里山が残っていました。ところが高度経済成長以後の農業の近代化や防災上の理由などから、焼畑は少しずつ途絶えていきました。

唯一、余呉町摺墨の農家の永井邦太郎氏(2015年7月逝去)が焼畑を営んでおられ、山かぶの栽培をされていましたが、やはり防災上の理由により現地での焼畑農業を続けることが難しくなりました。

2007年(平成19年)このため大学の研究者の協力を得て伝統農法を復活されました。

その後、永井氏より焼畑で育てた山カブの普及の紹介があり、環境問題が切実になっている今、原始の農業と思われてきた焼畑農業こそ農薬や肥料を使わない「環境」や「人間」にやさしい見直すべき農業であること、そして山かぶを余呉の伝統的な野菜として継承していきたいとの思いから、2010年(平成22年)に永井氏、大学の研究者の協力を得て、弊社が管理する赤子山スキー場にて焼畑農業を開始しました。


焼畑農法は8月に山肌を焼きます。火によって土壌は消毒され病害虫の発生が抑えられます。

また灰は肥料となります。余呉の「山カブ」はこの焼畑の地に種を蒔き、そして何もせず自然にまかせて育てます。草が生えてこようがその中でも育つ強さが「山カブ」にはあります。

カブの赤色のもとになるアントシアニンの生合成には昼夜の温度差が大きいことが必要とされるため、余呉の焼畑で栽培した山カブは赤みが強く、味と香りが強い。

余呉の焼畑で育てたものしかない自然の滋味があります。
赤子山スキー場では毎年焼畑を実施して山カブを栽培しています。山カブはウッディパル余呉のレストランにて提供しています。赤子山は昔からわらびやよもぎなどの山菜がありましたが、地元住民以外の侵入や乱獲により、数がなくなってきていました。

しかし、この焼畑をやり始めた翌年には、わらびが芽吹き、よもぎやふきなどが見られるようになりました。

焼畑で土地を再生することができたのです。焼畑の山は毎年変えて、休閑林で
多様な生物を育むことや、里山を切り開くことで森林の再生を促す役割があるようです。


弊社では、森林の手入れの一つとして再生のサイクルを活かした循環型の取り組みであると考えています。本来なら山を切り開き、焼畑を行っていくことがよいのですが、防災の観点から、それは難しく叶いませんが、赤子山スキー場が焼畑農業を知ってもらうための場所となるよう、また山カブの普及のために活動しています。